法的考察

チャイルドトレーラーは法的にはどうなのか?


全国の道路交通法実施細則において、自転車トレーラーに関する条項を全て抽出しました。

この他に、関連する法令として、道路運送車両法がありますが、こちらには自転車トレーラーに関しては明確な記述は無いようです。

全国の実施細則を調べる限り、自転車トレーラーの公道走行は全国的に問題ないと解釈されます。ただし、自転車トレーラーはリアカーであり、リアカーは荷物を積載するものとした考え方から、子供が乗車するチャイルドトレーラーの運用に関しては、消極的に解する自治体もあります。

(もし、チャイルドトレーラーの運用に関して消極的な見解を持つ自治体を知りたい方はご連絡ください。サイトには明記出来ませんが、個人的な情報としてであればお伝えします。何故か:明記してしまうと、情報が歪曲して一人歩きする恐れがあるからです。それら自治体の公安委員会が、公式な文書通達にてチャイルドトレーラーの運用に関して触れているのであれば、それに依拠して明記出来ますが、現時点ではそうした公式な見解を記した文書は存在しないのです。ですのでここで書くことは適切ではありません。)


実は小職は、2016年1月、全国の公安委員会に電話で質問を行い、各自治体にて、チャイルドトレーラーが公道走行可能かどうかの確認をしました。結果、ほどんどの自治体では走行に問題はない事が分かったのですが、いくつかの自治体では、「公道走行に関して消極的に捉える」との見解を頂きました。その理由は「リアカーに子供を乗せるのは危ない」「リアカーは、人員の乗車用ではない」また、「クルマとの接触も考えられるので危ない」というものでした。


では法的にはどうか?という論点では、正直なところ会話が堂々巡りで進展しませんでした。当局は「リアカーに人が乗ることは想定されていません」と主張をするのですが、では、道交法もしくは道路運送車両法の何処に「リアカーに人が乗る」事を禁じている条文があるのかと尋ねると、明確な答えを頂いた自治体はありませんでした。


(注:「軽車両」は適切な「乗車装置」が搭載されていれば、その定員に応じて人員の乗車が可能、という道交法上の条項があります。これは「軽車両」であるリアカーにも適用されるので、チャイルドトレーラーの一般道走行は法的に何の問題はない、というのが小職の意見です。自転車活用推進研究会や、その他有識者が集う協会も同じ見解を持っています。)


(追記2016年10月:チャイルドトレーラーに消極的な姿勢を示す自治体でも、公安委員会の相談員によっては、「リアカーだから自転車で引っ張れるよ!」と軽く回答を得られる場合があります。回答には個人差があると思われます。

また道交法上、同じ文言を掲げる自治体間でも解釈が分かれています。「リアカーのけん引」に関して同じ内容(すなわちチャイルドトレーラー公道走行不可とも捉えられる条項)を謳っている自治体は全国で11あります。理論的には11の自治体全てが、「チャイルドトレーラー不可」と回答しなければおかしい訳ですが、なぜか「宮城県」と「兵庫県」では、「チャイルドトレーラーの公道走行可能」と回答を頂く事ができます。解釈によって、また人によっても回答が違うのはいかなるものかと思います。)


また、一方、ネットの世界でも、チャイルドトレーラーの運用に関しては、法的にグレーとする意見が散見されます。日本の道交法では、自転車で牽引できる車両に関する記述が、昭和初期の状況を反映して作られていて、チャイルドトレーラーの運用を想定していない事が原因と思われます。ただ、ネット上での識者も、根拠となる明確な法的条項を掲げた上での主張ではなく「一般通念としてリアカーには人は乗らない」とか「安全面に疑問」という推論で話を進めていますので、彼らの話も参考程度ということになります。


重ねて書きますが、チャイルドトレーラーの運行に関しては、法律を読む限りは、全国的に公道走行可能と解釈できます。

どこにも「禁止」とは書いていません。ただひとつ、「リアカーは社会通念上、荷車で人は乗らない」だけが、反対派の拠り所になっていると思われます。チャイルドトレーラーユーザーが、もし反対派の意見に遭遇したら、彼らにその「根拠法」を問うてみて下さい。だれも明快な答えを返すことはできません。


では、そうした否定的な見解を持つ自治体で、「チャイルドトレーラーの禁止令」が公的に施行されるかというと、現時点ではそれは有り得ないと思われます。まず、社会的な重要性が低く、現場のおまわりさんが、そこまで気を配って、注意喚起を促すことは考えられないからです。次に、先ほどの事情です。根拠法がはっきりしないので、おまわりさんはチャイルドトレーラーを取り締まることは出来ません。それから、法律云々よりも、現実問題として、チャイルドトレーラーユーザー層の止むを得ない事情にも目を向ける必要があります。トレーラーユーザーの7割くらいは、子供の保育園送迎をしているママです。子供2人を保育園に送るママは、市販の「子供乗せ自転車」では、転倒の危険があるという理由で、チャイルドトレーラーを導入しています。特に年子や双子さん、あるいは子供3人をチャイルドトレーラーで保育園送迎しているママは、チャイルドトレーラーを否定されたら、生活が成り立たなくなります。現状の日本で市販されている「子供乗せ自転車」では、子供が小学校に上がるまで自転車送迎しなければならないユーザー層のニーズを満たしておらず、そうした隙間をうめるためのツールとしてチャイルドトレーラーが静かに市場に広がっています。世間的には「子供が楽しそう」で「微笑ましく」「便利そう」で「安全」な車両であるため、一般的な感覚を持つ人であれば、トレーラーをみて「違法人員乗車だ」と非難することはまずありません。

(もし、トレーラーユーザーの方で、おまわりさんから注意をされた、もしくは近所の人から非難された、という方は協会までご一報ください。)


そうした現状をみますと、法律上の文言だけで、チャイルドトレーラーを「グレー」=「禁止」と決め付けるよりも、むしろ、子供乗せ自転車では叶わない、「年長さんまで安全に乗車できる」車両として、これを社会で認め、有効利用できるかという、前向きな捉え方で、制度やインフラを構築していった方が合理的だと思います。実はこれは、自転車を「軽車両」と明確に定めて、「車道走行」をするよう定めた政府指針にも通ずるところがあります。自転車は車道走行が原則です。そのために、道路を整備したり、クルマの運転マナーを喚起をしたりと、社会が自転車を有効利用する方向へと変わってきています。チャイルドトレーラーも同じ「軽車両」で車道走行が原則です。横幅は自転車と20センチしか違わないチャイルドトレーラーですので、道路幅の占拠具合も、自転車とあまり変わりません。「子供乗せ自転車」よりは安全で、年長さんでも安全に自転車で送迎できる便利ツールです。今後の自転車活用社会では自転車と同じように、運用される可能性があります。双子さんや3人のお子さんを保育園送迎出来なくて困っているお母さんは意外と多いです。トレーラーはそうしたお母さん達の社会参加(就業)を可能にするツールになります。そのためには、やはり法律の見直しが一番の近道であると考えます。今の道路交通法の関連する条文は、かなり昔の事情を反映して作られています。実情に合わせて法律を改定する事こそ、今必要であると考えます。